このままのキャリアでいいのか不安なとき|40代からこれからの働き方を考える
仕事から帰って夕食を終え、何となくスマートフォンを眺めていた夜。
同世代の知人が転職したという投稿が目に入る。別の友人は管理職になり、以前の同僚は新しい資格を取ったらしい。
今の仕事が嫌いなわけではない。明日にでも辞めたいほどの不満があるわけでもない。それなのに、ふと、
「私はこのままでいいのかな」
という気持ちが浮かんでくることがあります。
40代になると必ずキャリアに迷う、というわけではありません。仕事をもっと広げたい人もいれば、今の働き方をできるだけ長く続けたい人もいます。仕事の比重を少し下げ、生活の時間を増やしたいと考える人もいるでしょう。
だから、「このままでいいのか」という問いに、誰にでも当てはまる答えはありません。
転職する。昇進する。資格を取る。今の会社に残る。
そのどれかを急いで選ぶ前に、これからの自分は、仕事に何を求めたいのだろうと考えてみることから始めてもよいのではないでしょうか。
- 「このままでいいのかな」は、すぐに仕事を変えるサインとは限らない
- キャリアを「上へ進むこと」だけで考えなくていい
- これからの働き方で、何を優先したい?
- 「変えたいこと」だけでなく「残したいこと」も見てみる
- 5年後・10年後の職業を決めなくてもいい
- 学び直しは選択肢。でも「何か勉強しなければ」と焦らなくていい
- 「やりたいことが分からない」なら、これまでの仕事を振り返ってみる
- 周りの「順調」に、自分の働き方を合わせなくていい
- 仕事だけでなく、暮らしから働き方を考えてもいい
- 一人で考えて堂々巡りになるなら、第三者と整理する方法もある
- 大きく変える前に、小さく試せることもある
- 泉の「これからの働き方」メモ
- まとめ|「このままでいい?」から「私はどう働きたい?」へ
- 参考情報
「このままでいいのかな」は、すぐに仕事を変えるサインとは限らない
キャリアに不安を感じると、「何か行動しなければ」と考えやすくなります。
転職サイトを見る。資格を調べる。副業について検索する。
もちろん、それが次の一歩につながることもあります。ただ、不安を感じたからといって、すぐに環境を変えなければならないわけではありません。
少し前まで自分が仕事に求めていたものと、今ほしいものが変わってきただけかもしれないからです。
若い頃は、まず仕事を覚えることや経験を積むことを重視していた。収入を増やしたい時期もあった。任される仕事が増えることに手応えを感じていた。
けれど今は、仕事だけで一日が終わる生活に少し疲れている。家族との時間を取りたい。自分のために使える時間もほしい。今の収入は守りながら、もう少し無理のない働き方ができたらと思う。
求めるものが変わることは、仕事への意欲がなくなったことと同じではありません。
むしろ、「これからどう働きたいか」を考え始めるきっかけになることがあります。
キャリアを「上へ進むこと」だけで考えなくていい
「キャリア」という言葉から、昇進や転職、年収アップを思い浮かべる人は多いかもしれません。
けれど、働き方を考える方向は一つではありません。
管理職を目指したい人もいれば、現場の仕事を続けたい人もいます。新しい分野へ移りたい人もいれば、今まで積み重ねてきた経験を深めたい人もいるでしょう。
今より大きな責任を持つことに魅力を感じないからといって、働くことに消極的とは限りません。
たとえば、今の仕事を続けながら担当分野を少し広げる。通勤時間を短くする。残業を減らす。より柔軟に働ける部署を考える。収入の安定を優先して、あえて大きな変化を選ばない。
こうした選択も、これからのキャリアを考えることの一部です。
キャリアは「どこまで上へ行ったか」だけではなく、これまでどのように働いてきて、これからどのように働きたいのかという長い流れの中で考えることができます。
これからの働き方で、何を優先したい?
理想の仕事を考えようとすると、「やりたい仕事は何ですか」と聞かれることがあります。
けれど、すぐに職業名が浮かばなくてもおかしくありません。
むしろ、働く時間、収入、安定、やりがい、家族、自分の体調や体力、仕事以外の生活など、いくつかの側面から考えてみるほうが分かりやすい場合があります。
たとえば、
「収入は今の水準をできるだけ守りたい。でも、毎日の残業は少し減らしたい」
という人がいるかもしれません。
仕事内容には満足しているけれど、片道一時間以上かかる通勤をこの先も続けたいかと考えると迷う人もいるでしょう。
昇進することより、家族の用事があったときに休みを取りやすい環境を大切にしたいこともあります。
反対に、「生活は比較的落ち着いてきたので、もう少し仕事で新しいことをしてみたい」と感じる人もいます。
すべてを同時に満たす働き方が見つかるとは限りません。
だからこそ、
「何が一番大事か」
ではなく、
「今の自分は、以前より何を大事にするようになったのだろう」
と考えてみると、今の気持ちが見えやすくなります。
「変えたいこと」だけでなく「残したいこと」も見てみる
「このままでいいのかな」と思うと、今の仕事の気になるところばかりに目が向くことがあります。
もっとやりがいがほしい。
通勤がつらい。
給与に不満がある。
仕事内容に変化がない。
もちろん、それらは無視しなくてよい気持ちです。
ただ、今の職場にも、失いたくないものがあるかもしれません。
毎月の収入が安定していること。休日が決まっていること。慣れている仕事だから無理なく進められること。一緒に働きやすい同僚がいること。自宅から通えること。
何年も働いていると、それらは「当たり前」に見えやすくなります。
環境を変えてから初めて、以前の職場にあった良さに気づくこともあります。
だからキャリアを考えるときは、
「何を変えたい?」
だけでなく、
「今の働き方で、これからも残したいものは何?」
という問いも一緒に置いてみてください。
変えたいものと守りたいものの両方が見えると、転職するか残るかという二択だけではない選択肢も考えやすくなります。
5年後・10年後の職業を決めなくてもいい
「これからのキャリアを考えましょう」と言われると、5年後や10年後の目標を決めなければならないように感じることがあります。
けれど、今から10年後の仕事や生活を正確に予想することはできません。
会社の状況も変わります。家族の状況も変わるでしょう。自分自身の興味や優先順位が変わることもあります。
そこで、将来の職業名を決める代わりに、
「次の数年間、どんな状態に近づいていたいか」
を考えてみる方法があります。
「5年後は管理職になる」ではなく、
「今より少し時間に余裕がある働き方をしていたい」。
「○○の資格で転職している」ではなく、
「今の収入を大きく変えずに、できる仕事の幅を少し広げていたい」。
「独立して成功している」ではなく、
「自分で選べる仕事を今より増やしていたい」。
こうして考えると、未来を一つに決めなくても、今からできそうなことが見えてくる場合があります。
数年後の自分に約束をするのではなく、向かいたい方向をぼんやり持っておくくらいでも構いません。
学び直しは選択肢。でも「何か勉強しなければ」と焦らなくていい
2026年7月に公表された令和8年版男女共同参画白書では、「仕事や職業キャリアに関する女性の学び直し」が特集されています。
働きながら新しい知識や技能を学ぶことは、今後の選択肢を増やす一つの方法になり得ます。
ただし、公的に学び直しが取り上げられているからといって、40代になったら全員が何かを学ばなければならないわけではありません。
「とりあえず資格を取っておこう」
「今はリスキリングの時代だから勉強しなければ」
と始めても、自分が何を変えたいのかが分からなければ、途中で目的を見失ってしまうことがあります。
順番を逆にしてみてはどうでしょう。
まず、
「今の仕事で、もう少しできるようになりたいことはある?」
「違う仕事に興味がある?」
「これから選べる仕事を増やしたい?」
と考えてみる。
その結果、「そのためには新しい知識があったほうがよさそう」と思ったとき、学び直しが具体的な手段になります。
資格を取ること自体がゴールではありません。
今の仕事を深めるための勉強でもよいですし、興味のある分野を少し調べてみるだけでも構いません。
大きな決断をする前に、小さく知るところから始める方法もあります。
「やりたいことが分からない」なら、これまでの仕事を振り返ってみる
これからのキャリアを考えようとしても、
「そもそも、やりたい仕事がない」
と感じることがあります。
無理に夢や目標を作る必要はありません。
未来が見えないときには、これまでを振り返るほうが手がかりを見つけやすいこともあります。
たとえば、これまで働いてきた中で、比較的苦にならなかった仕事は何だったでしょう。
誰かに頼まれることが多かったのは、どんなことだったでしょうか。
忙しかったけれど、終わったあとに少し手応えを感じた仕事。反対に、もうできれば繰り返したくないと思う仕事もあるはずです。
「好きな仕事」だけで考えなくても、
「それほど苦にならない」
「思ったより得意だった」
「これは今後減らしたい」
という感覚から、次の働き方を考えることもできます。
厚生労働省の「ジョブ・カード」には、これまでの職務経歴や資格、学習歴などを整理し、今後のキャリア・プランを考えるための様式があります。
転職すると決めていなくても、これまで自分が何をしてきたのかを書き出してみることはできます。
「何も積み上げていない」と思っていたのに、振り返ってみると、毎日の仕事の中で身につけてきたことがいくつも見つかるかもしれません。
周りの「順調」に、自分の働き方を合わせなくていい
同世代の人が昇進したと聞いたとき。
以前の同僚が転職して、楽しそうに働いているように見えたとき。
資格取得の報告や独立したという投稿がSNSに流れてきたとき。
自分だけが同じ場所にいるような気がして、焦ることがあります。
「人と比べても意味がない」と言われても、そう簡単には気持ちを切り替えられないでしょう。
比べてしまったなら、その気持ちをもう少しだけ見てみる方法があります。
たとえば、昇進した友人を見て心がざわついたとします。
本当に管理職になりたいのでしょうか。
それとも、収入が増えたことが羨ましいのでしょうか。
会社から評価されたことに心が動いたのでしょうか。
自分とは違う場所へ進んでいること自体が眩しく見えたのでしょうか。
同じ「羨ましい」でも、中身は少しずつ違います。
比較する気持ちを無理に消すのではなく、自分が何を望んでいるのかを知る材料にすることもできます。
誰かと同じキャリアを選ぶ必要はなくても、自分が心を動かされた理由には、これからを考えるヒントが隠れているかもしれません。
仕事だけでなく、暮らしから働き方を考えてもいい
キャリアを考えるとき、仕事のことだけを見ていると答えが出にくいことがあります。
これからどんな場所で暮らしたいか。
家に帰ってから、どのくらい自分の時間がほしいか。
休日には何をしたいか。
家族との時間をどう取りたいか。
体調や体力を含め、どんな一週間なら無理なく続けられそうか。
こうした生活側から考えてみると、仕事へ求める条件が見えやすくなる場合があります。
「やりたい仕事は分からないけれど、夜まで仕事の連絡を気にする生活は減らしたい」
という答えでも構いません。
「今より高い収入より、平日の夕方を落ち着いて過ごせることを優先したい」という人もいれば、「今は仕事にもう少し時間を使いたい」と考える人もいるでしょう。
どちらが良いという話ではありません。
仕事は人生の大きな部分を占めることがありますが、人生のすべてではありません。
どんな仕事をしたいかだけでなく、どんな毎日を送りたいか。
そこから逆に働き方を考えてみることもできます。
一人で考えて堂々巡りになるなら、第三者と整理する方法もある
キャリアについて考え始めると、
「転職したほうがいいのかな」
「でも今の会社も悪くない」
「何か勉強する?」
「何を勉強すればいいの?」
と、同じところを行ったり来たりすることがあります。
そんなとき、誰かに話しながら考える方法もあります。
キャリアコンサルティングは、転職する人だけのためのものではありません。
厚生労働省では、キャリアコンサルティングを、職業の選択だけでなく、職業生活の設計や能力の開発・向上などについて相談し、助言や指導を受けるものとしています。
2026年度の「キャリア形成・リスキリング推進事業」では、在職者や求職者を対象に無料のキャリアコンサルティングが行われています。
相談例として挙げられているのも、
「今後のキャリアについて、なんとなく不安がある」
「今の職場でのやりがいや目標を整理したい」
「仕事とプライベートのバランスに悩んでいる」
といった内容です。
つまり、「転職します」と決めてから相談する必要はありません。
誰かに正解を決めてもらうのではなく、自分の考えを言葉にして整理する相手として使うことができます。
家族や友人に話してみるのも一つの方法です。
ただ、近しい相手ほど「今の会社を辞めないほうがいい」「思い切って転職すれば」と、その人自身の価値観が入ることがあります。
そんなときには、仕事やキャリアについて第三者と整理してみる方法も知っておくとよいでしょう。
大きく変える前に、小さく試せることもある
キャリアに迷うと、転職や資格取得など、大きな行動ばかり考えてしまいがちです。
けれど、まだ方向が分からないなら、小さく試すこともできます。
興味のある仕事について調べてみる。
社内で別の仕事をしている人に話を聞いてみる。
気になっていた講座の内容だけ確認してみる。
これまでの職歴を書き出してみる。
残業を少し減らせないか働き方を見直してみる。
こうした一つひとつは、「キャリアチェンジ」と呼ぶほど大きな変化ではありません。
それでも、やってみることで、
「これは思っていたほど興味がない」
「もう少し知りたい」
「転職ではなく、今の会社で変えられるかもしれない」
と分かることがあります。
将来を考えることと、今すぐ人生を変えることは同じではありません。
分からないときは、決めるために小さく確かめるという進み方もあります。
泉の「これからの働き方」メモ
答えをきれいにまとめる必要はありません。時間のあるとき、自分の気持ちに近い言葉を探してみてください。
- 今の仕事で、これからも残したいものは何だろう?
- 今の働き方から、一つだけ負担を減らせるなら何を減らしたい?
- 収入、時間、安定、やりがいの中で、今の自分が以前より大事に感じるものは?
- 仕事以外の生活で、これから増やしたい時間はある?
- 誰かの働き方を見て焦ったとき、私はその人の何を羨ましいと感じた?
- これまでの仕事で、意外と苦にならなかったことは?
- 5年後、どんな肩書きではなく、どんな一日を過ごしていたい?
- 今すぐ大きく変えなくても、少し確かめられることはある?
全部に答えられなくても構いません。
「収入は守りたい」「もう少し自分の時間がほしい」という二つだけでも、それはこれからの働き方を考える材料になります。
まとめ|「このままでいい?」から「私はどう働きたい?」へ
「このままのキャリアでいいのかな」と思ったとき、すぐに転職先や資格を探さなくても構いません。
まずは、
今の働き方で残したいもの。
少し変えたいもの。
これから増やしたいもの。
を分けてみる。
それだけでも、「何となく不安」という状態から少し離れることができます。
昇進することが合う人もいるでしょう。転職で環境を変える人もいます。新しいことを学ぶ人もいれば、今の職場に残りながら働き方を調整する人もいます。
今は大きく変えない、という選択もあります。
40代だから急いで答えを出さなければならないわけではありません。
反対に、「もう今さら」と考えて、これからの希望を小さくする必要もないでしょう。
「このままでいいのかな」という問いは、他人から見た自分を気にすると答えが見つからなくなりやすいものです。
少し問いを変えて、
「私は、これからどんな働き方をしたいのだろう」
と考えてみる。
そして、まだ分からなければ、調べてみる。誰かに話してみる。小さく試してみる。今は決めない。
その一つひとつも、これからのキャリアを考えるための選択肢です。
参考情報
確認日:2026年9月13日
内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和8年版」
仕事や職業キャリアに関する女性の学び直し、仕事と生活の調和などを確認。
URL:https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r08/zentai/index.html
厚生労働省「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」
キャリアコンサルティングの定義、制度、キャリアコンサルタントの位置づけを確認。
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/career_consulting.html
厚生労働省委託事業「キャリア形成・リスキリング推進事業|個人向け無料キャリアコンサルティング」
今後のキャリア、仕事とプライベートのバランス等について利用できる無料相談の現行情報を確認。
URL:https://carigaku.mhlw.go.jp/icc/
厚生労働省「マイジョブ・カード|ジョブ・カード様式のダウンロード」
職務経歴、資格・学習歴、キャリア・プランなどを整理する現行様式を確認。
URL:https://www.job-card.mhlw.go.jp/guidance/download_blank
厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」
企業・事業所・労働者における教育訓練、自己啓発、キャリア形成支援等の最新調査を確認。
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html

